EDUCATION.01

作物と子ども達の成長、
持続可能な食育活動を
置戸町の酪農家
川畠 鉄矢さん
北海道置戸町は、多くの畑作農家をはじめ、酪農家を含む一次産業の従事者が多い地域です。
一方で、これほど畑に囲まれた地域でも、畑作や酪農に触れる機会は、普通に生活しているとほとんどないんです。さらには、子どもたちが成長し進学すると、ほとんどがここ置戸町を離れてしまうことが多いため、地域の少子高齢化が進み、後継者不足は年々深刻化しています。そんな中でも、自身が育った町で育つ作物や乳製品の成長から収穫までの過程を学び、そのおいしさを身をもって実感することで、農家への理解や地域への愛を深めてもらおうと、置戸町では認定こども園の園児を対象に年3回程度の農業・畜産体験会を実施しています。
この取り組みは2011年から始まり、10年以上続いている活動です。
置戸町でよく栽培されているじゃがいもや枝豆などの豆類をはじめ、毎年園と青年部で植える作物を協議し子どもたちに毎年楽しんでもらえるよう工夫しています。
また町内ではあまり主力ではない作物もあえて育てることで、色んな種類の作物に触れる機会を作ってあげることも意識しています。
畑は園児がいつも遊ぶ庭から見える場所にあり、春先に植えた作物の成長を日々見守りながら、秋に収穫できるようにしています。また、夏場には、牛の哺乳体験も行っています。子どもたちより少し大きい子牛への哺乳体験では、みんなが大はしゃぎで楽しんでいる様子が印象的です。


そんな置戸町は「日本一の給食」とも言われていて、毎日違うメニューを出し、一年を通じて同じメニューを2度出さないように心掛けているんです。作る相手が子どもであっても、子ども用にアレンジしない「本物」の味を追求しています。たとえばカレーでは、香味野菜と小麦粉、19種類のスパイスをじっくり炒めて練り上げたルーを使うというこだわりがあるくらいなんです。
食材の植え付けから収穫までを子ども自身が体験し、素材本来の味を活かすよう真正面から向き合った本当に美味しい給食を食べる置戸町の子どもたちは、なんでもまっすぐに育つのだとか。
それほど毎日の食生活が充実しているこの地域だから、この食育活動を通じて農業への関心を持って、働くきっかけになると嬉しいなと想像したりします。
10年前に始めた1回目の食育活動を行った子ども達は、今頃高校生になっているので、そのように実を結ぶと嬉しいですね。
年々青年部員の数も減少する中、長く継続してきた食育事業は子ども達のために、そして将来の地域のために是が非でも継続していきたいんです。青年部OBとも協力しながら未来につながる持続可能な食育体験を築いていきたいと思います。
