CTAFTSMAN.14

大型機械を駆使し合理的な生産体制
地域を支えられる農家を目指して

北見市広郷の畑作農家

西野 翔さん

私の家は北見市上ところに曽祖父の代、大正時代に入植しました。高台の土地で水田が作れないこともあり、当初から畑作が中心で祖父の時代では豆が多く、以前はでん粉の加工施設が近隣にあったこともあり、でん粉に加工する芋を作っていたと聞いています。祖父も新しい技術や機械には敏感で、馬耕の時代にいち早くトラクターを導入していたようですが、父の代では新しく始めた小麦づくりで、当時でもあまり導入されていなかったコンバインが導入されました。

でん粉の加工工場がなくなるなど、小麦の生産量を高めていくなかで、近隣の農家さんと共同して、日本でも珍しい大型コンバインを導入し、今でも大型の機械を活かして近隣の農家の作業を代行する農作業委託、農業コントラクターの仕事を積極的に引き受けています。私自身は乗り物が大好きで、小さい頃から大型の機械による農作業を見て、手伝うこともあり、学校を卒業してすぐに就農しました。いつも乗り物に乗れるこの仕事は天職だと思います。

私の畑では通常の輪作で小麦、てんさい、じゃがいも、のように3年毎で作る小麦のサイクルではなく、小麦、小麦、てんさい、じゃがいも、のように2年連続で小麦を生産する4年サイクルで輪作しています。土づくりが大事なので、栄養を与えて土の力を高める堆肥などの量は増やさざるを得ないのですが、小麦生産に必要な大型機械の稼働率を上げることができます。また、小麦は実りが良くなりすぎると穂が重くなって倒れやすくなるため、繊細な管理が必要ですが、衛星やドローンによる栽培状況の確認や、作業の合理的なスケジューリング、局所的な肥料散布量のコントロールができる散布機の導入などで、実りが良く倒れない小麦に育ち、品質と生産量を両立させることができます。このような技術と観点を持ちながら、他の農家さんの作業を引き受けてきた結果、一部の作業では自分の農園の約8倍、他の農家さんの畑で作業することもあります。たくさんの農家さんの作業を引き受けられるようになったのは、自らの農園の作業を大型機械で合理化できたからこそだと思います。

今後、農業が盛んなオホーツク地域でも農家人口が減っていきますが、これまで培われてきた農地自体が減るわけではありません。ですが、残念なことに農地が余り出している地域もでてきています。人が減ってしまう環境でも、機械を活かして効率的な作業や、各々の農家の投資規模や期間にあわせた作業の外注などを引き受けることができれば、地域の農業人口が減ったとしても農業が続けていけますし、生産基盤があれば色々な品目にも挑戦することができます。資材費や肥料費の高騰により、品目を大幅に変えざるをえない農家さんもいます。そんな中でも、固定費に投資をせず、作業の外注によりフットワークのある経営をサポートすることで、地域の農家の仲間の役に立てることもあると思います。色々な課題の中で自身の農業の効率化にも挑戦しながら体制を整え、自らの経営と地域の農業の悩みに応えられるように頑張っていきます。