CTAFTSMAN.23

土の良し悪しとは
土本来の力を自然由来の方法で

置戸町の畑作農家

廣中 諭さん

私の農場では種子馬鈴薯を中心に、小麦、大豆、ビート、緑肥を約60haほど栽培しています。学校卒業後札幌に就職し建築系の企業で7年間働いた後、2016年7月にUターンしました。まだ経営は移譲されていませんが、私の代で5代目になります。元々、農業を継ぐつもりはなかった私ですが、3人兄弟の長男として家との関わりも多く、幼い頃の農作業の手伝いが楽しかった記憶がありました。就職してから時間が経つにつれて実家の農業に後ろ髪を引かれるような感覚が大きくなり、妻の理解も得て農業の道に進むことを決めました。もちろん楽しいばかりではありませんが、新しいことに挑戦したり研究するワクワク感を日々感じています。

元々傾斜地で、豪雨での土の流出や、強風での飛散など天候によるリスクの高い土地で、どのように良い農業ができるかを常に考えています。そんな中、最近リジェネラティブ農業という土壌の改善による環境再生をめざす農業に興味を持つようになりました。これらの考えは化学肥料をできるだけ減らして緑肥を活用し土壌に炭素を貯蓄することや、畑を全く耕さない、もしくは畑を耕す回数を省略しても問題なければ減らしてみるなど、できる限り土に優しい選択をしようという考え方にのっとったものです。絶対的な技術があるわけではなく、自分自身が土を守るという選択を常にしていくという思想的な側面もあります。これらの方法はまだ広くは認知されていませんが、長期的に土壌を改善し、強風や豪雨から土を守るなど、自然災害に強い農業に繋げていけるのではないかと考えています。

昨年(2023年)からは日本各地の同じ思いを持った仲間たちと一緒に、地域を越えて研究を進めています。慣行農業、有機農業、畑作、畜産と経営体がバラバラのメンバーが集まって、皆それぞれの畑をより良くしようとフィールドワークや学習会を通して研究結果を共有しあっています。私は昨年は省耕起とミックスカバークロップに挑戦しました。通常は1〜2種類の緑肥を9種類のミックスに変えて土壌中の根の多様性を高めます。まだまだトライアンドエラーの段階ですが、様々な可能性を感じています。

農業は土地によって収量が変わったり、難易度が変わる業種ですが、良い土か悪い土かを決めているのは人間だけで、土は純粋に土です。この畑を開墾する大変さは私には想像することしかできません。その上で私たちは先人がつくってくれた畑を使わせてもらっているんだという考え方を持っています。この土を大切に、10年前の自分の土よりも、さらに良い土を作っていくためにも、今研究しているリジェネラティブ農業への取り組みを継続していきたいと思います。