CTAFTSMAN.12

父に教わった経験を軸に、
自分なりの農業にチャレンジ

北見市川東の畑作農家

小川 圭佑さん

北見市の川東というゆるやかな丘陵地帯で、祖父の代から畑作農業を営み、私で3代目になります。父の代からは周囲の農家さんの影響も受けながら玉ねぎを生産するようになり、その他にビート、さつまいもなどを生産しています。私自身はITに関連した専門学校を卒業してから農家になり、父から色々なことを教わりながら、かれこれ12年(2022年時点)になります。初めはわからないことだらけで、父の指示に従って仕事を覚えていきましたが、今は一通りのことができるようになり、自分なりの農業にチャレンジしてみようと思うようになりました。主にJAきたみらいの大きな流通の中で出荷をしていますが、新しい品種の栽培や、お客さんの反応を見ながら販売できる直売にもチャレンジしています。

一通りの仕事に慣れてきた数年前、新たに大豆をつくり始めて、新しい作物も自分なりの方法で作ることができるということがわかりました。その他に何か面白いものが作れないかを調べて、北海道、北見では珍しいさつまいもの耕作にチャレンジしようと決めました。最初は少量作って、スタッフのみんなに食べてもらう程度から始めたのですが、評判もよく、本格的に生産に着手しました。一年で軌道に乗せられなかったらやめよう、と覚悟して始めたのですが、なんとか初年度から黒字にすることができ、チャレンジを続けています。
さつまいもは南の地域の作物というイメージが強く、初めは本当に北見で生産できるかどうかも不安でしたが、一年目に栽培に成功し、二年目はかなり慣れてきました。農家は作物を作ることが主なので、どう売ったらいいのか、宣伝の仕方も、値段の決め方などわからないことも多かったのですが、自分で色々なことを調べて、敷地内の直売所での販売も成功させることができました。売り方も、旧来のさつまいもの和風のイメージではなく、クラフト感や可愛さなども演出したいと考え、専用の段ボール箱も新規にデザインし、販売しています。さつまいもは寝かすと糖度があがるため、販売の前には最低1ヶ月寝かせてから、専用の箱に入れて販売します。販売時期はビートの収穫時期とも重なるため、スタッフにも頑張ってもらって、直売所での販売にあたっています。

直売所で販売をやってみると、今まで見えなかった色々なことがわかります。さつまいもは3品種栽培、販売しているのですが、王道の紅はるか、絹のような舌触りのシルクスイート、焼くとかぼちゃのように黄色くなるハロウィンスイート、各々の特徴と良さがあります。もちろん、お客さんによって好みが分かれるのですが、お客さんからは、「一番どれが美味しいですか?」と聞かれます。各々の特徴を説明して、お客さんの好みにあったものを会話の中で明確にして、買ってもらいます。舌触りや粘度などでも好みも分かれますし、調理の仕方によっても味の出方が全然変わるので、いろいろな話をして納得して選んでもらいます。食べてもらって、リピーターとしてまた買いに来てくれることの嬉しさも直接感じることができますし、中には買った芋で干し芋を作って持ってきてくれるお客さんもいました。「また来年も作ってね」という言葉をもらった時は、またこの言葉を貰えるように頑張ろうという気持ちになります。直売所ではこのような接客があり、普段の生産だけではわからないお客さんの思考や、買ってもらうために必要な説明工夫など、色々なことが学べます。このような消費者意識を肌で感じることは、メインで作っている品目の生産にもいい影響を与えると考えています。

このあたりの農家は後継者が少なく、同世代は私と畜産農家さんの後継者だけです。一般的に農家が離農する時は、近隣の農家さんが農地を引き継ぐことが多いため、私の世帯の農地も拡大していく可能性は十分に考えらえます。個人で大きな耕作面積で生産するには限界があるので、今後は大規模化も想定した法人化や、生産のIT化にも適応していかなければいけません。大規模貯蔵や出荷調整など、全国有数の恵まれた農協の仕組みも頼りにしながら、新しい変化や消費者ニーズにも対応できる実力をつけていきたいと思います。今も家族や周りの人が見守ってくれていると思いますが、せっかく農家の家に生まれたのだから、やりがいのあること、好きなことをこれからも思いっきりやっていきたいです。