CTAFTSMAN.11

確かな管理と体制を整え、
安全で安心な作物を届ける。

北見市広郷の畑作農家

大丸 裕之さん

昭和の初めに青森で漁師をやっていた曽祖父が入植し、農家を始め、私で4代目になります。祖父の代では稲作と酪農もやっていて、父の代で畑作を中心とした農業になりました。主な品目は玉ねぎで、北見周辺では歴史が浅いほうなのですが、かれこれ25年になります。私自身は元々農業を継ごうという強い意識はなかったのですが、一人っ子ということもあり、ぼんやりといずれ農業に携わるのかという気持ちがありました。札幌の大学を卒業して小売業に就職したのですが、窓もない建物の中で一日を過ごし、朝から晩まであっという間に過ぎ去っていく。広々とした農地の中で育ってきた私には、都会の暮らしが合わないと感じるようになり地元に戻って就農しました。仕事の内容もわからず帰ってきましたが、大変なことも多いですが太陽と共に朝起きて、畑にいって、日が暮れると帰ってくる。1日の時間の経過を感じながらの仕事は、自分に合っていると感じます。

農業は、以前の有るものを売るという仕事とは違っていて、どういうものを作るのかを自分で考え挑戦して、実際に食べる人に届くというやりがいがあります。商売としては収量が大事ですが、ものづくりとして品質のいいものを作りたい、綺麗な玉ねぎを作りたい、という思いがあります。直売をしているわけではないので直接消費者の声を聞くことは少ないのですが、知人に直接品物を送るとすごく喜んでくれます。自分の目の届く人だけではなく目に見えないところにも消費者の方がいるので、たくさんの方に喜んでもらえるものづくりをしていきたいです。
また昨年から、より安全で安心なものづくりのためにJGAPの認証にも注力をしています。
JGAPは、消費者の安全安心と、持続可能な農業生産を両立する枠組みで、作業記録に基づいた生産計画や、他の農地への影響なども含めた交差汚染、水や土の安全性の確認から整理整頓まで幅広い管理基準があり、導入にはたくさんのハードルがありましたが消費者の方々の安心安全はもちろん、より良い玉ねぎを作るためにきちんとした管理体制を持って生産を良くしていきたい、という思いで導入を進めました。これまでは勘と経験を拠り所にしがちな農業生産でしたが、徹底的に生産を管理することで見えてくる改善があります。作業データをきちんと残すことで、農薬の使用量も適切に管理しより安全な作物ができますし、肥料もより適正な量にすることで、美味しく、美しく、大きな玉ねぎを作ることにもつながります。

日々の整理整頓も目に見える形にすることで家族や職員全体の生産管理意識を高められますし、農薬の飛散を近隣の農家さんとも連携することでより安全な作物づくりにつながります。良いものをつくるために、これさえやれば良い、ということはないので、通常では見過ごしてしまいそうな小さなことでも組織全体できちんとした管理をすることで改善を積み上げることができ、農業機械や資材に対しても何をどこに置くかといった詳細な管理も含め、徹底した自己管理によってより良い作物ができると考えています。
農業は家族経営も多く、この地域でも離農をする農家さんもいるのが現状です。そうなると、私のような働き盛りの農家がいる世帯の一件あたりの耕作面積はより大きくなっていきます。GPSによるトラクターの自動化など生産を効率化する技術は定着してきており、面積自体を増やしていくことはできるかもしれません。さらにそれと同時に今取り組んでいる安全安心に結びつく自己管理を徹底することが、規模と品質の両立における下地になると考えています。
私にも3人の子供がいて、安全で美味しいものを食べさせたいという思いがありますし、だからこそ食べたいと言ってもらいたい。そんな、目の前にある思いと、全国の消費者の方の顔を思い浮かべながら、日々細やかな改善を積み重ねていきたいと思います。