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生産を伝えることは、
消費者のプラスになる。

北見市端野町の畑作農家

斉藤 正廣さん

端野町の緋牛内という地区で、24haの農地の中、馬鈴薯とビートと小麦を主品目に、大豆やニンニクも生産しています。29歳から実家の農業に関わり、30歳で経営を移譲し、それから基本的には一人で経営をしています。現場経験一年という非常に短い経営移譲は珍しく、多くの経営承継では親子での経営をある程度踏まえてのことですが、父も潔く経営を私に託し、自由に経営ができる環境を与えてくれました。もちろん、浅い経験値の中での経営移譲だったため、なかなかうまくできないこともありましたが、セオリーとは違う作業の進め方や、畑の状況を地域の先輩方が親身になって助言をくれたり、たくさんの人との関わりの中で経験値不足を埋めることができ、3年目には大方のことができるようになり、経営も安定するようになりました。また、3年目には作付けしていなかった大豆の生産を開始、6年目にはニンニクの生産を開始するなど、新たなものづくりに挑戦しています。結果として畑の輪作品目も増え、もともと生産していた品目の土壌改良にも繋がり生育の向上になるなど、相乗効果が生まれています。

就農当初は経験値がなく、作物は植えれば育つ、と浅はかな考えを持っていました。そのため結果はさんざんで、理想通りの生育結果が得られない期間が続きました。当時の私は土壌診断の意味合いや価値もよくわからず闇雲に生産していたのですが、失敗を積み重ねていく中で、土作りには化学的根拠に向き合わなければいけないということに気づきました。
作物も人間と同じで、健康状態に対して必要な栄養素をきちんと摂取することにより、健康と成長が得られます。土に対しても、作物が必要な栄養素がきちんと含まれ吸収されるよう、現場の土壌分析に基づいた成分供給をしないと、健康で美味しいものには育ちません。現在は、農協や資材メーカーさんの技術サポートをもらいながら、自分なりの経験値を組み合わせ、根拠を持った土作りを心がけています。
必要な栄養素を作物にきちんと届ける知識や技術を磨いて、さらに美味しいものを安定的に作っていきたいと考えています。

北見市の観光協会と連携し、畑のガイドツアーの受け入れを通じた農業の発信にも取り組んでいます。農業は、作物を通じて価値を届けるものではありますが、生産現場のことを知ってもらうことで、手にとっていただく価値はさらに高くなると考えています。受け入れている畑のガイドツアーでは、参加者の方が芋堀り体験を行い、じゃがバターとして召し上がっていただいていますが、自ら掘り上げたジャガイモをシンプルに茹でて食べるだけで、これまでとは違うおいしさとして経験していただくことができます。

また、私の農場は主要な道路沿いに面していますが、畑の景観を撮影される方が悪気なく畑に立ち入ってしまうことがあります。畑の土はとても繊細なもので仮に病原菌が侵入してしまうと、菌が畑全体にまん延することで数年間はその畑全体が使えなくなってしまうリスクもあります。
このように農業を知ってもらうことは、農産物に対する価値観を高めることや、生産の安全性を高めることに繋がる、非常に重要なことであると言えます。
今後も共に共感してくれる地域の農業者と連携し、安全で安心な生産への理解浸透と、消費者が農作物に対する価値観を高めてもらえるよう、発信していきたいです。